Human resource

人材業界でありコンサル。田舎育ち体育大卒が意識高い系社会人を体現した末路

銀座のジャズバーで素敵なウィスキーとマスターに出会った話

 

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ふと吸い込まれるように入ったそのバーは

後輩と行くには自分たちはまだまだ若すぎた。

たかだか大学生の

しかも都心に住んでいるわけでもない

 

お酒の楽しみ方も

それはそれは下品な物しか知らない。

そんな自分たちには

余りにもハードルが高すぎるそのバーには

65歳をこえた(それは話を聞いたから確か)白髪頭を

オールバックに整えたその男性がいて

自分たちが初めて来たと一目で見抜かれたみたいだ。

 

 

「ここはウィスキー専門だよ」

そうマスターは自分たちに告げ

またハードルが上がったのは言うまでもない。

ウィスキーもまた、安物を一気飲みしたことしかなく

本当の美味しさすら知らない。

どこで作られて

何が原料なのかも知らない。

 

そんな素人は

世間知らずは出ていくべきなんだったと

いまさらながらに思ったが

マスターは我々を拒まなかった。

 

 

「君達はまだ若いのにこの店の何が気になったんだ」

まあそういいたくもなるだろう

答えは「全部」だ

ジャズバーにありがちな木目調のカウンター

数えてられない程のウィスキー。

アンティークの時計。

ブリキの車のミニチュアが奥の棚に何台か。

全てがうす暗いライトに照らされて中途半端に見え隠れしている。

そんな光景が自分にとっては新しいのだ。自然とワクワクした。

その奥にはバーテン、ウィスキーの本が何冊も、、、

 

この人本物かもしれない。

そんな希望が湧いてきた。

 

何なら正直に言うが

そのバーがある場所へは、

4月から働く会社から歩いて行ける。

そして会社に対して不安が立ち込めている。

だからもしかしたらそのバーが

自分の心の拠り所になるかもしれない。

そんな気がしてならなかった。

 

 

自分のそんな弱い部分はもちろん後輩には見せず

そのまま話が進んだ

 

 

マスターが単身赴任で経営をしていること

なんなら田舎生まれだから住むのは田舎の方がいいなと思っていること

都会は買い物や情報集めにはやはり強い事

会社勤めは9年間だけやったことがあること

65歳を過ぎて制限をしたが、山に挑むことが好きなこと。

 

 

そして、若者が挑まなくなったこと

今までの人間の喜びが

カネや地位だったから、

それを与えれば喜ぶだろうと高をくくった勘違い野郎が余りにも多い事。

それに対して全く反応を示さない自分を含めた世代の人たち。

なんなら今の40歳代の人たちはうまーく自分の給料だけ上げて

ろくに仕事はせずまだ給料も上がっていない人たちに

全部回しているのだそうだ。要するにかなりずるい世代だそうだ。

そんな人たちが給料や地位を餌にしてきても

食いつこうともしない気持ちはわからなくもない。

 

そんな人たちは我々が働き盛りになった時に

社会から退場する。

そうすると少子高齢化も重なって

ずるい世代の給料分が分母に対して均等にいきわたり

給料の水準が上がるらしい。

 

このマスター何者なんだ。聞き上手だからか?

 

 

ウィスキーにはロマンがあること

ウイスキーのボトルには数字が書いてある。

それは熟成された年数を書いたものだそうだ。

売り出すまでに平均10年ほどかかる。

その際に利益は1円も生まれない。

分かっていてそのウィスキーを作り届ける。情熱の一品が集まっていると考えると震えた。

これこそ仕事である。人の魂を身体に取り入れている感覚がたまらなかった。

 

結婚は早いうちにするべきであるということ

「早い方が勢いで結婚できる。30代では引き算をしてしまう。」

というのが理由だそうだ。素敵な話だった。

今となっては大学生の恋愛すら

どこ大でてて身長がどんだけあって顔が誰に似ているのか

みたいな基準から引き算して彼氏を決めるらしいが

自分はもっとその、、、惹かれる何かに正直になれる恋愛をしたい

この人になら命を懸けたい。そう思える人に出会いたいしそんな自分でありたい。

 

多少の財力や今後の見込をつけられるのは構わないが

結婚した後に

多くの女性に自分を選ばなかったために発生する機会損失に

失望してもらうような男になりたいと思えた。

 

 

 

マスター自身は挑む人が大好きであるということ

これは別れ際をみれば一目瞭然だった。

当然話の中で

自分たちがスポーツをやってきた

そしてそれが生き方のルーツになっていること。

そしてなんなら挑むことが好きで

高みを目指したいと思うことが多々あるタイプの

数少なくなってしまった人種であることを伝えた。

ただこれからどうなるかわからなくて、不安があると。

 

 

そんな自分たちを

「絶対に大丈夫だから自信を持ちなさい」と

強く握手を交わして送り出してくれた。

男同士の握手では、

力強さが大体気持ちと同じものだ。この握手ほど心に響いたものはない。

 

 

決して学生が払える金額ではなかった

財布の中は空っぽになったし

社会人にになってからの財力でも

そう頻繁に来れることはないだろう。

なんなら名前を聞くことすら忘れてしまった。

それでもよかった。

夜風が気持ちよくて

夜の銀座の街がやたらと明るく見えた。

 

名前は自分がもう少し凛々しくなったころに聞くとしよう。

バーのマスターというのはそうそう人の顔を忘れたりはしないそうだ。

 

 

「すこしずつでいいから、今より上の世界を覗きつづけなさい」

この言葉をここに記せたのは3日後だったけど

この言葉に見合う人生をぜひとも追っていきたい。